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2007年9月11日 (火)

【書籍紹介】 「大手私鉄比較探見 東日本編」 

★都営5000形の写真に魅せられて
JTBキャンブックスの最新刊です。テーマの大きさと価格(\1,800)に比べて本の厚さが薄い気がして、購入しようかどうか迷ったのですが、裏表紙の4枚の写真のなかに都営5000形旧塗装4両編成のカラー写真があったものですから、その写真欲しさに購入しました。

裏表紙に写真を掲載しただけあって、この時代の新刊なのに都営5000形(5200ではありません)の記述がありました。目新しい内容ではありませんでしたが、5000形ファンとしては避けられぬ出費といえましょう。
 それでは、皆様へのお薦め度はと言うと‥難しいところです。下記に紹介した車両ファンが読めば共感することが多い反面、記述内容に偏りがあるからです。

★紹介している車両
今日を築いた車両:;東武8000、西武101、京王6000、小田急5000、東急8000、相鉄7000、京急1000(初代)、京成3600、都交5000、東京地下鉄5000、
往年の名車::東武DRC、小田急NSE、京王5000

★考察している輸送サービス

相互乗り入れ、ホームライナーの充実化、ソフトウェア(空調、ドアのゴム、蛍光灯、窓ガラス、匂い、女性専用車の必要性)、ハードウェア(パワーエレクトロニクス、台車)、車両の値段と安全性、ダイヤ

★感想1.車両の機器・性能面の割合が高い
読んだ感想としては、作者の判断基準に基づく関東大手私鉄を書いた本と感じました。そしてその基準が経済性・汎用性に置かれている点が目新しいのです。
“理想の鉄道車両”の章で、「私は車両のアコモデーションより走行装置の良し悪しで車両を評価している。振動をいかに吸収して走行するかだ。」と記しています。この書籍は、車両・ダイヤ・ターミナルを中心に眺めるというテーマが掲げられていますが、車両の性能・機器に重点がおかれた記述がなされています。それも鉄道会社毎の特色を踏まえた論を展開しており、単純に高加減速車を採用すべき、新線を建設すべき、という提言ではありません。そういった意味では、客観的事実を踏まえた冷静な観察の目で語っていると感じます。

しかしながら、作者がアコモデーションよりも走行装置に評価の重点を置いているが故に、車両の性能・機器への記述が厚い分、客室部分の記述が少ないのです。窓の大きさ・座席の構造・路線案内、これらも重要な要素と感じますが、それらが気にならない朝夕のラッシュ時輸送を念頭に語っているのかと思わせます。また、ダイヤ面の記述は、改善希望点を描くに留まっているといえます。
 それと後半で各社のターミナルも紹介していますが、商業施設の歴史的経緯で読ませる分、駅部分を語るくだりは、データ重視というよりも、作者の印象を語っているように感じられます。雑誌「鉄道ファン」のエッセイといった趣でしょうか。データ重視は車両面の記述に留まっている印象です。メカに弱い私には参考書籍となりますが、皆様へのお薦め度は低くなります。

★感想2.すべてを語らないので、ある程度の知識が必要
この書籍は、巻頭で「この本が私鉄研究のテキストになれば‥」、巻末で「数ある鉄道趣味本の中にあって総合的見地に立って私鉄各社を眺めた本はおそらく初めてではないだろうか」と語っています。しかし、記述量からいっても入門書にはならず、各社の路線・車両の現況・歴史・特色を掴んでからでないと、作者の真意は伝わってこないように感じます。

その点に関して巻末では、車両・保安施設・営業面で、各社異なる用語・基準を用いるが故の私鉄研究の難しさにも触れているところから、私鉄研究の幅広さと奥行きは十分理解しているところを見せたうえで、巻頭では、各社の「比較を加えながら、その各社の持つエキスを抽出して書いたつもり」と語っています。際立つ違いに焦点を当てた文章に特化しているのも、エキスを抽出した結果だと受け止めました。だからこそ、薄い本になったのだと感じます。記述に偏りがあるものの、書籍全体の分量の少なさを侮ってはいけません。

★感想3.作者の関心は明瞭
私は単行本の巻頭と巻末を先に読むので、既に紹介した「私鉄研究のテキスト」「総合的見地に立った初めての本」という言葉から、この本の厚みでそれを語れるのか?と、いささか斜に構えて読み始めたのですが、切り口が異なる内容の面白さは感じました。
 その面は、P28-30の“わたしの好きな関東の私鉄車両”に現れています。作者が重視するのは車両の統一性と語り、「形式の別なく車内アコモを揃え、新旧の別なく均質の輸送サービスをすることである。」‥「技術革新は小刻みに採用せず、ある時点で大量採用することで部品の互換性および保守管理作業の統一を図る」‥「新技術に飛びつくことなく、全体のシステムの中でそれがはたして必要なのか、そうだとしてもコストに見合うか」が重要としています。内容に偏りが生じている理由が、このあたりの記述からも実感できました。
 相互乗り入れの章で、統一性の視点から、回転式マスコンのOFFとなる角度が各社に違いがあるという記述には、思わずへぇ~でした。

★求めるものは“シンプルなエレガントさ”
私は車両というものに常にシンプルなエレガントさを求めている。こうした点に女性としての感性が現れるのかも知れない。無論これは私の主観に過ぎない」
→そうなんです。作者の広岡友紀氏は女性です。女装或いは元オトコかと感じて読んでみましたが、文面からは正真正銘の女性と見受けられます。

思い出として、非鉄の彼氏と聖蹟桜ヶ丘で散歩して、多摩川鉄橋を渡る京王5000系を見た記憶を語っています。そして、作者が撮影した唯一の掲載写真が、多摩川河川敷から撮った聖蹟桜ヶ丘を走る京王電車の写真(今年撮影)なのです。(思い出の場所の写真だったんだ)
 ところどころに見える女性としての発言を除くと、女性の手になる鉄道書という意識はありません。本を初めから読まない私は、後になって気がつきました。

広岡友紀(Hirooka Yuki)さん、鉄道・航空アナリストと紹介されていますが、ネットの書籍情報からは、3冊の単行本を出しており、鉄道系は今回が初めてのようです。東急線田園調布ー多摩川園(現多摩川)間で電車を見て育ち、外国航空会社客室乗務員の経歴を持っている方です。

★総括
雑誌「鉄道ピクトリアル」で大手私鉄車両の性能面に特化した特集記事を読んでいる印象
で、その面では興味がそそられますし、文量は少ないものの紹介車両に好感を持つ方は楽しめる内容です。ただし、車両の活躍の歴史・ダイヤ・ターミナルへの言及は物足りなく、私鉄研究・分析の故 吉川文夫さんの著作や川島令三さんの著作とは趣の異なる内容といえます。
 好き嫌いの分かれる本となるでしょう。

★他のブログでの紹介
「鉄道好きな猫又の日記」 9月6日“この本は読んで本当に驚きました”では同書を絶賛しています。
私は絶賛とまではいかない紹介をしていますので、トラックバックはせずアドレス紹介にとどめます。
ttp://blog.livedoor.jp/h nekomata/archives/50931021.html#comments

【大手私鉄比較探見 東日本編】 JTBパブリッシング JTBキャンブックス鉄道79 作者:広岡友紀 本文全143ページ 2007年9月1日初版 定価\1,800(税別) 

オンラインショップ「本やタウン」の同書紹介サイト
http://www.honya-town.co.jp/hst/HTdispatch?isbn_cd=9784533068485

最後に:東武鉄道ならこの方、といわれる花上嘉成さんが写真提供で大いに協力されています。また、単行本ながらも掲載写真1枚毎に、撮影者名がフルネームで明記しています。作者撮影の写真が少ない分、目に付く部分です。

※文中の太字は私が装飾したもので、引用部分の原文では違います。

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